痩せているのに糖尿病⁉その原因と予防方法を管理栄養士が解説

2024-01-08

痩せ型の糖尿病は意外と多い

皆さんは、糖尿病は肥満の人や高齢者がなる病気だと思っていませんか?

実は、糖尿病は痩せ型の人でも発症します。

日本においては近年、痩せた女性の糖尿病患者が増えてきています。特に若い世代で増加傾向にあることから、将来の健康への影響が懸念されています。

私は大学在籍中、食と生活習慣病の関連性を専門分野として研究をしていました。今回はそんな私が、誰にでもある糖尿病のリスクについて解説していきます。

そもそも糖尿病とは

糖尿病は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの分泌量が少なくなったり、働きが悪くなったりすることで、血糖値が下がらなくなる病気です。

生活習慣や遺伝的な要因で発症する場合が殆どで、初期段階では自覚症状が少ないのが特徴です。

しかし、糖尿病が進行すると、血管や内臓などがダメージを受けて、重篤な合併症を引き起こす危険があります。

特に、血液検査で「空腹時血糖」「HbA1c」の値が高い方は、注意が必要です。

痩せ型糖尿病になる原因とは

そもそも何故、痩せているのに糖尿病になるのでしょうか?

糖質の過剰摂取

糖尿病は、血糖値が下がらなくなる病気であり、血糖値には糖質の摂取量が大きく関わっています。

糖質を摂取すると、インスリンというホルモンが分泌され、上昇した血糖値を下げようと働きます。

糖質の摂取量が多すぎると、インスリンの働きが追いつかず、血糖値が下がりきらなくなってしまいます。

痩せ型で糖尿病になる人は、食事量は少ない傾向にあり、一見すると糖質の摂取量は過剰に見えません。

しかし、食事から摂取しているエネルギー量に対して、糖質の割合が高すぎるのが特徴です。

近年、若い世代で増えているのは、スイーツやお菓子を食事の代わりにしている例です。

この場合、1日の摂取エネルギーは少ない為、体重の増加はありません。

ですが、糖質の摂取量に対して、糖の代謝に関わるビタミンB1などの栄養素が不足していることで、血糖値が高い状態が続く様になります。

その結果、痩せていても糖尿病に陥りやすくなります。

筋肉量が少ない

筋肉量が少ないことも、血糖値が高くなる原因になります。

食事から摂取した糖質は、身体のエネルギー源として、筋肉や肝臓、脂肪細胞に蓄えられています。

これらは、身体にエネルギーが必要になった時、エネルギー源として使用されます。

筋肉が少ない人は、筋肉に蓄えられる糖質の量が少ないため、食後に血中の糖質量が高くなる傾向にあります。その結果、慢性的な高血糖状態に陥り、糖尿病にもなりやすいと言われています。

近年、若年層のスポーツ離れが深刻化していると言われており、運動不足で筋肉量が少ないことが原因で、糖尿病に陥るケースが増えています。

遺伝的な要因

遺伝的な要因で糖尿病に陥るケースもあり、これを「1型糖尿病」と言います。

1型糖尿病のメカニズムは全て分かっていませんが、免疫反応が正常に働かないことが関係していると言われています。

1型糖尿病は進行型で自覚症状も出やすいため、気付きやすいのが特徴です。

個人の生活習慣に関わらず、遺伝的な要因で発症するため、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。

瘦せ型糖尿病の予防方法

ここからは、痩せ型糖尿病の予防方法をご紹介します。

食生活

栄養バランスの整った食事は、糖尿病予防の基本です。

私は大学時代、血糖値と食生活の関係性について研究をしていましたが、瘦せ型糖尿病の場合、食生活を見直すだけで約7割の人の症状が改善しました。

主食(米・パン・麺など)、主菜(肉・魚・卵など)、副菜(野菜・きのこなど)のバランスに偏りがない様に心掛けましょう。

特に、糖尿病予防の観点で気を付けたいのが「糖質」の摂取量です。

糖質は主に、主食に多く含まれているため、丼や麺類ばかり食べていると、糖質が過剰になりやすいです。

また、砂糖も糖質であるため、甘い食べ物や飲み物には特に注意が必要です。

スイーツを食事代わりにしたり、ジュースばかり飲んでいると、血糖値が下がらず、糖尿病に陥ります。

とはいえ、糖質は人間のエネルギー源となる重要な栄養素であるため、制限をしすぎると身体に不調をきたします。

1日の摂取エネルギーの55~60%は、糖質から摂る様にしましょう。

運動

適度な運動も糖尿病を予防する重要な要素です。

食事から摂取した糖質は、身体のエネルギー源として、筋肉や肝臓、脂肪細胞に蓄えられます。

蓄えられたエネルギー源は、身体がエネルギーを必要とした時に使用されます。

筋肉が少ない人は、筋肉に蓄えられる糖質の量も少ないため、食事から摂取した糖質が血中に残りやすくなります。

その結果、慢性的な高血糖状態に陥り、糖尿病にもなりやすいと言われています。

適度な運動により、筋肉量を増やすことは、食後の血糖値を抑える効果があるのです。

運動が苦手な方は、ウォーキングや体幹トレーニングでも構いませんので、継続して行うことを意識しましょう。

まとめ

さて今回は、痩せ型糖尿病の原因と予防方法を解説してきました。

糖尿病は生活習慣病の一種であり、殆どの人は生活習慣が原因で発症します。

一般的に、肥満体型の人が発症しやすい病気という印象がありますが、近年、痩せ型の人にも増えてきています。

痩せ型の糖尿病は、自覚症状が少なく、発見が遅れて重症化するケースも少なくありません。

本記事をきっかけに、ご自身の生活習慣を見直してみては如何でしょうか。